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2000年3月 8日 (水)

第17回 サラブレッドの筋肉と遺伝

 単行本の締め切りが近づいてきて、追いつめられた重苦しい気分の毎日。精神的にかなりつらくなってきた。日常のデーイリー・ワークにもかなりの時間を割かなければならないので、現実的に残された時間はあまりない。アイデアがまとまらず、どうしても前に進めない日もあるにはあるけど、飲みに行く時間があるのなら、パソコンでゲームをしてる時間があるなら、パチンコしている時間があるなら、少しでも書かなければいけないのだけど、ついつい、安易な方に流れていく。きのうの夜は『JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN』のCDを買った。早速、家に帰ってひとり聴き入る。パソコンは開いたものの原稿は書けなかった。書かなかった。
 
 今週前半は、速筋と遅筋について、千葉大の丸山工作先生と東大の石井直方先生の資料の読み込みに費やした。速筋と遅筋の組成比が遺伝によるものだということは、これまでも述べてきたところだが、サラブレッド場合、速筋と遅筋の組成比は87パーセントを標準としてプラスマイナス5パーセントの幅しかない。人間と違ってサラブレッドは筋肉の組成上は個体差が非常に小さい。そういう点でサラブレッドはすべてスプリンターの筋肉を持つといえるが、トレーニングによって、速筋の一部はいわゆる遅筋化が進み、スピードを維持しながらも、より長い距離を走り抜くことができるようになる。マイラーや、ステイヤーはトレーニングによって作られていく。
 
 そこで疑問がでてくる。距離の適性を決めるのは筋肉の組成比だけではないにしても、血統とか、遺伝とかは何を伝えてきたのか。ステイヤー血統とスプリンター血統は存在するのか、という素朴な疑問である。その疑問を解決できないまま、時だけが過ぎてしまった。

 今週、その疑問に答えてくれる石井直方先生のレポートを見つけた。  
 そのレポートを要約すると、アンギオテンシン変換酵素(ACE)という酵素の遺伝子にはI型とD型の2型があり、遺伝子は一対の組からなっているから、「II」「ID」「DD」の3種類の遺伝子型があることになる。I型の遺伝子を少なくともひとつ持つ人のACE活性はDD型の遺伝子を持つ人のそれと比べて低い。ACE活性が高いと血液の循環を制限し、運動時には筋への循環をも抑制する。毛細管の良好な発達は、低〜高強度にわたる範囲の持久力にとって重要なだけに、I型の遺伝子を持っているかどうかは、遺伝上スタミナがあるかどうかにつながっていく。

 「酸素マスクを使わずにエベレストに登頂した一流登山家25名について、ACEの遺伝子型を調べ、23名がI型(低活性型)の遺伝子を持つことを発見」、「さらに、一般人を用いて、筋持久力のトレーニング効果を調べたところ、II型の人の方がDD型の人に比べ、10倍もトレーニング効果が高い」。「筋繊維組成、ACEのいずれの場合も、筋持久力が残念ながら遺伝的素質に強く依存することを示している」というもの。  

 人のデータだから、それがそのままサラブレッドに当てはまるものなのかどうか、今の段階では分からないが、サラブレッドの遺伝上、スタミナを司る遺伝子が存在すると考えた方がステイヤー血統の存在を否定しないですむことになる。  
 いずれにせよ、人もサラブレッドもトレーニングなしに強くはなれない。

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