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2000年4月21日 (金)

第22回 リッキーワールドが勝った

 リッキーワールドが浦和の交流レースに出走することになった。
「一番人気ですね。言っちゃ悪いけど、他のメンバーがひどすぎる」
 前日、出馬表を囲んで社内でも話がはずんだ。4月20日のメインレース・マルチロマン特別。10頭立てのレースだが、6頭がJRA所属馬。他の4頭も公営馬と言っても、かつてはJRAに所属していた7、8歳馬ばかり。要するにJRA現役とOBの交流レースのようなもの。
 
 当日の昼過ぎになっても、昨夜からの強い雨がまだ続いている。
 米田氏と電話で待ち合わせの確認を取る。
「勝てると思うけど、この雨が心配なんだ」

 関係者はどんなに評価が高くても、心配の種は尽きないものらしい。私はそれよりも口取りの写真に加わりたいので、「ネクタイしていったほうがいいかな」と聞いたが、米田氏はリッキーのことで頭がいっぱいらしく、「公営はいらないよ」という返事にならない返事。結局、ネクタイはやめた。
 浦和競馬場は久しぶりだった。コースは水が浮いて田んぼ状態。それでも重の発表だった。

 リッキーワールドは前走、中山のダートの1200で3着と健闘。レース内容が評価されての1番人気に支持されている。パドックでも個室の来賓席でも、米田氏は落ち着かない様子で、熊のようにうろうろしている。出走馬たちがパドックを回っている頃、「途中、事故渋滞に巻き込まれて遅くなった」と中野調教師も駆けこんできた。

 私はリッキーワールドからの馬単と2着流しの馬単を3000円づつ買った。買ったつもりだった。
「29万7000円です」
「え、29万? そんなお、金、あ、り、ません」
 冷や汗がでてきた。
「間違いでしょうか」
「たぶん」

 マークシートを確認してもらったら、1点3万円でマークしていた。米田氏だけではない。私もかなり入れ込んで、平静さを失っている。気もそぞろ、うろうろしているうちにレースが始まってしまった。

 リッキーワールドは出負けして、4、5番手を進む。ただ、2コーナーを回り終えたところから、一気に仕掛けて向こう正面ではリッキーが先頭にならびかける。
「行け! 田嶋あ!」

 3、4コーナーも外外を回って4コーナーで先頭。直線、ナカハマワールドとの叩き合いになった。直線半ば、ナカハマワールドに少し交わされたように見え、声援も萎えそうになったが、
「大丈夫、よし、勝てた」と中野調教師の自信に満ちた声が部屋に響く。
 中野調教師は脚色でリッキーが優っていることを見ていたのだ。さすがだなー。
 結果、1馬身と少し、リッキーワールドがリードしてゴール。
 拍手して、握手して、肩をたたいて、おめでとうございます。

 挨拶もそこそこに傘を片手に中野調教師が走り出す。我々も息を切らして後を追いかける。迷路のような通路を走り抜けると、検量室があり、田嶋騎手が泥だらけの顔をほころばせている。リッキーの白い息が雨の中でも元気に見える。

 よかった。よかった。よく頑張った。おめでとう田嶋君。これで2勝目だ。
 握りしめた田嶋騎手の手は手綱をしごき続けたからなのだろうか、ひどく熱く感じた。
 検量室の前で、はじめての記念写真を撮った。やっぱり、ネクタイしてくればよかった。

 その夜は田町にでて、3人でささやかな祝勝会をやった。
 ビールが旨かった。 

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