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2000年4月26日 (水)

第23回 テイエムvsトップロード

 春の天皇賞の3200メートルという距離は、ステイヤーズ・ステークスの3600メートルに次ぐ長距離レースであり、本質的にステイヤーのカテゴリーに属するものだ。しかし、日本の競馬のレース体系がスピード中心の中・短距離にシフトされつつある時代にあって、権威はあっても番組上は特殊なレースになりつつある。レースの体系がスピード中心になれば、当然、血統上もそういう馬を生産する事になるはずで、本質的なステイヤー血統は我が国では存在しにくくなっている。ステイヤーの血を評価する春の天皇賞の意味は必然的に失われていく。それでも、天皇賞馬は誕生する。
 
 今年の天皇賞のメンバーを見ても、自信を持ってステイヤーと評価できる馬がいない。その現れが、スローペースの多さである。出馬表を見ていて真っ先に、そのことに目がいってしまう。それはたぶん、能力があるのに道中の流れだけがスローペースになっているのではない。能力がないために、結果としてスローぺースにならざるを得なかったのだ。それはスローペースでありながら、それに見合うだけの上がり指数が伴っていないことで理解できる。
 
 メンバー中でスローペースに対する上がり指数を持った馬はテイエムオペラオー、ナリタトップロード、ラスカルスズカ、ステイゴールドの4頭だけである。この4頭はまがりなりにも90以上のスピード指数をも持っており、標準的なレースの流れであれば90以上の指数は示せる。他で90以上の指数を持つ馬はホッカイルソーだけで、この5頭が今年の春天の中心を構成する馬たちと見てよい。  

 中でも長距離の実績、安定感といったらテイエムオペラオーだろう。グラスワンダー、スペシャルウィークなど現6歳世代の後塵を拝してきたとはいえ、互角に戦ってきた5歳世代はテイエムオペラオーだけといってもよい。彼らが馬場を去ったのち、京都記念、阪神大賞典を快勝。実績も積んできた。スローペースによる指数の上下はあるものの、ステイヤーズステークスで示した17の先行指数、97のスピード指数を見れば、厳しいペースになっても持ちこたえられるスタミナは評価できる。今年の春の天皇賞にもっとも近い馬だ。  

 ナリタトップロードはこの2戦、京都記念、阪神大賞典でテイエムオペラオーに負けたが、完全に勝負付けがすんだわけではない。特に、京都記念は斤量差もあってのこと。指数上はテイエムオペラオーを上回っており、能力に遜色はない。菊花賞で見せたように、軽い芝が合うタイプだけに、京都が舞台の春天では逆転もあり得るのではないか。  

 また、ラスカルスズカは阪神大賞典でナリタトップロードに先着、2着を確保したが、それが本当の能力かどうか、指数からははかりにくい。しかし、名手・武豊を背にして3着をはずしたことがなく、若い和田テイエムオペラオー、渡辺ナリタトップロードがペースの判断を誤れば武の出番はあるはずだろう。想定されるペースはスロー。騎手の巧拙も考えなければならない。  

 個人的には馬の能力だけならテイエムオペラオー、ナリタトップロードの戦いだと思うが、先に述べたように、ステイヤーの血の戦いではないとすると、蛯名ホッカイルソーをなど実力騎手が乗った中距離馬の台頭もありそうな気がしてならない。

 ◎テイエムオペラオー、○ナリタトップロード、×ラスカルスズカ、▲ステイゴールド、△ホッカイルソー、レオリュウホウ、トキオアクセル、スペキュレーション。  

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2000年4月21日 (金)

第22回 リッキーワールドが勝った

 リッキーワールドが浦和の交流レースに出走することになった。
「一番人気ですね。言っちゃ悪いけど、他のメンバーがひどすぎる」
 前日、出馬表を囲んで社内でも話がはずんだ。4月20日のメインレース・マルチロマン特別。10頭立てのレースだが、6頭がJRA所属馬。他の4頭も公営馬と言っても、かつてはJRAに所属していた7、8歳馬ばかり。要するにJRA現役とOBの交流レースのようなもの。
 
 当日の昼過ぎになっても、昨夜からの強い雨がまだ続いている。
 米田氏と電話で待ち合わせの確認を取る。
「勝てると思うけど、この雨が心配なんだ」

 関係者はどんなに評価が高くても、心配の種は尽きないものらしい。私はそれよりも口取りの写真に加わりたいので、「ネクタイしていったほうがいいかな」と聞いたが、米田氏はリッキーのことで頭がいっぱいらしく、「公営はいらないよ」という返事にならない返事。結局、ネクタイはやめた。
 浦和競馬場は久しぶりだった。コースは水が浮いて田んぼ状態。それでも重の発表だった。

 リッキーワールドは前走、中山のダートの1200で3着と健闘。レース内容が評価されての1番人気に支持されている。パドックでも個室の来賓席でも、米田氏は落ち着かない様子で、熊のようにうろうろしている。出走馬たちがパドックを回っている頃、「途中、事故渋滞に巻き込まれて遅くなった」と中野調教師も駆けこんできた。

 私はリッキーワールドからの馬単と2着流しの馬単を3000円づつ買った。買ったつもりだった。
「29万7000円です」
「え、29万? そんなお、金、あ、り、ません」
 冷や汗がでてきた。
「間違いでしょうか」
「たぶん」

 マークシートを確認してもらったら、1点3万円でマークしていた。米田氏だけではない。私もかなり入れ込んで、平静さを失っている。気もそぞろ、うろうろしているうちにレースが始まってしまった。

 リッキーワールドは出負けして、4、5番手を進む。ただ、2コーナーを回り終えたところから、一気に仕掛けて向こう正面ではリッキーが先頭にならびかける。
「行け! 田嶋あ!」

 3、4コーナーも外外を回って4コーナーで先頭。直線、ナカハマワールドとの叩き合いになった。直線半ば、ナカハマワールドに少し交わされたように見え、声援も萎えそうになったが、
「大丈夫、よし、勝てた」と中野調教師の自信に満ちた声が部屋に響く。
 中野調教師は脚色でリッキーが優っていることを見ていたのだ。さすがだなー。
 結果、1馬身と少し、リッキーワールドがリードしてゴール。
 拍手して、握手して、肩をたたいて、おめでとうございます。

 挨拶もそこそこに傘を片手に中野調教師が走り出す。我々も息を切らして後を追いかける。迷路のような通路を走り抜けると、検量室があり、田嶋騎手が泥だらけの顔をほころばせている。リッキーの白い息が雨の中でも元気に見える。

 よかった。よかった。よく頑張った。おめでとう田嶋君。これで2勝目だ。
 握りしめた田嶋騎手の手は手綱をしごき続けたからなのだろうか、ひどく熱く感じた。
 検量室の前で、はじめての記念写真を撮った。やっぱり、ネクタイしてくればよかった。

 その夜は田町にでて、3人でささやかな祝勝会をやった。
 ビールが旨かった。 

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2000年4月12日 (水)

第21回 大混戦になった皐月賞

 フサイチゼノンが体調が万全でないことを理由に急遽、皐月賞を取り消した。さっきまで、フサイチゼノンを中心に考えていたから、正直困った。もう一度フサイチゼノンをのぞいて出馬表を見直すと、全くのドングリの背比べだ。
 
 前走の指数上位馬は82のダイタクリーヴァ、81のエアシャカールとラガーレグルス、パープルエビス、77のカネツフルーヴ、クリノキングオー、タイムリートピックなど。連対可能な指数が75前後なら大混戦になっても不思議ではないだろう。  

 皐月賞は例年、直前指数上位馬たちが連対することが多いレース。そういう点からはダイタクリーヴァ、エアシャカール、ラガーレグルス、パープルエビスが有力。この中から軸馬を探せばいいはずだが、全体のレベルが低いだけに、上位馬たちに成長余力があるかどうかが問題。過信は禁物だが、トライアルのレースが比較的平均ペースで推移していたことを考えると、現時点でそれぞれのもてる能力は指数が表していると判断して良いのではないか。

 ただ、レースはパープルエビスが逃げるにしてもペースは上がりそうになく、スロー気味の流れになるだろう。馬場状態も先週の馬場状態を維持しているとすると、マイナス8前後。結局どちらかというと、スタミナよりスピード上位のレースになりそうだ。上がりに懸けたい馬たちには絶好のペースだろうし、馬場状態も同様に上がりに懸ける馬に不利はない。坂下からゴールまでの叩き合いを制した馬が皐月賞馬になるのではないか。  

 とすると指数上のポイントは、馬場状態のよいときに高い指数を示し、上がりのよい馬を探すこと。チェックすべき馬はエリモブライアンのきさらぎ賞と、ダイタクリーヴァのシンザン記念のレース、クリノキングオーの若葉ステークス。馬場状態は合わないが、他に上がり指数の上位馬はエアシャカールとラガーレグルスなどで、展開上有利に運べるのはこの5頭だろう。

 軸馬には安定感のある直前指数の高い馬をという点からダイタクリーヴァだが、勝つのは別の馬のような気がしてならない。レベルが低めで、かつ能力の接近したメンバーのレースであり、荒れる要素は多い。能力を見せていないクリノキングオー、エアシャカールの一発大駆けもあるかもしれない。

 ◎ダイタクリーヴァ、○パープルエビス、×エアシャカール、▲クリノキングオー、△エリモブライアン、ラガーレグルス、アタラクシア、タイムリートピック、ジョウテンブレーヴ、カネツフルーヴ。  

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2000年4月 5日 (水)

第20回 サイコーキララの死角

 桜の便りとともに、桜花賞のファンファーレが間近に迫った。

 なんといっても、注目はサイコーキララだろう。12月にデビュー以来、目下4連勝。その勝ち方も、無理なく先行して余裕で差しきるという強さ。 4戦とも平均ペースだったため、先行指数にも上がり指数にも、これといった特徴が見えないが、それは勝つだけならそういう力を必要としなかったからだろう。短距離のスピード、現時点の完成度という点では抜けた存在だ。

 あら探しをする気はないのだが、しかし、サイコーキララに死角はないのだろうか。
 サイコーキララは1200、1400、1600、1400とレースを使ってきた。基本的にはスピード上位といえる馬のはずで、スピードが豊かな分、スタミナには少し疑問があるのではないか。実際2着とのタイム差を距離別に取っていくと、距離が伸びるにつれタイム差が縮まっていく。120 0で1.1秒差あったものが、1600のエルフィンSでは0.1秒差にまで縮まっている。マイルの距離は1200や1400とは違うカテゴリーのレースだ。1200や1400ならスピードだけで押し切れるが、マイルとなるとスタミナの核がなければ乗り切れない。それがタイム差になって表れているのではないか。

 更にもうひとつの疑問。桜花賞は毎年ペースが厳しいのが特徴。平均的にみても先行馬の先行指数は+5から+10が標準である。今年はメンバーの 平均先行指数が低すぎるために、例年のようなハイペースになるかどうか気になるところだが、それでも、マイル戦での超スローペースはあり得ない。 ペースが厳しくなったときに、これまでのような鋭い直線の脚が使えるかどうかだ。とくにペースがゆるいと掛かり気味に行きたがるところもある馬だから、多少ペースが上がっても前へ前へ行くだろう。そのとき直線に余力を残しておけるかどうか。スタミナの核が少ないとすると、それは疑問だ。

 1600メートルという距離の適性でサイコーキララを上回る馬がいれば、サイコーキララが負ける場面もあるのではないか。

 そういう視点で出走予定馬をもう一度見わたすと、フューチャサンデーに目がいく。
 新馬戦は年明けの1月。ダートの1800を先行して差しきり勝ち。2戦目に芝のマイルの重賞・デイリー杯を後方から一気にまくっての圧勝。当日 の馬場状態は多少時計のかかる状態で、スタミナの核がなければできない芸当。スピード指数も75とメンバー中最高のものだし、上がり指数もスローペースでないレースでは、やはりメンバー中最高の+3を示した。マイルの適性、スタミナということなら明らかにサイコーキララより上だ。

 レース経験が少なく、馬群にもまれるとどうか。また、馬場状態が良すぎて軽いスピード比べになったときには多少の不安もあるが、データからはマ イル戦で一番内容が良いのはフューチャサンデーだ。

◎フューチャサンデー、○サイコーキララ、×サニーサイドアップ、▲チアズグレイス、△エアトゥーレ、ジョーディシラオキ、スプリングガーベラ、 オリーブクラウン、シルクプリマドンナ。

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