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2000年7月13日 (木)

第30回 「・・・・」

 10日の月曜日、夜8時半すぎ。子供と孫たちに囲まれて、病院の固いベッドの上で義父は息を引き取った。
 心臓の鼓動を伝えるはずのモニターは、底にへばりついたままの一本の線を映し出している。
 静かだった。
 これが死というものなのか。

 倒れてから20日間、ただ眠り続けた義父が、死の間際に目を開け、何かを語ろうと口を動かしていたことが印象に残っている。生きる、生きたいという義父の最後の命の輝きだったのだろうか。あるいは自らの死を受け入れた後の、最後の言葉だったのだろうか。しかし、言葉にはならなかった。

 夏の夜、すすり泣く娘の手を引いて、談話室のソファーに座る。
 私はかける言葉もなく、ただ、娘の手を握っていることしかできない。
 思う存分泣けばよい。生と死の悲しみを知ってはじめて、君も大人になるのだ。

 それから翌日、通夜があって、告別式があって。
 ひたすら事務的にことは進んだ。

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