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2004年6月17日 (木)

第168回長距離の逃げ馬

 3連複が21万1160円、馬単も7万5650円と配当的にも大荒れだったたけに印象も強かったのだろう、イングランディーレが勝った今年の春の天皇賞について、競馬雑誌などでは、いまだにいろいろ論評されている。たいていは、そのレースがいかに凡レースだったかということと、逃げ馬を捕まえきれなかった騎手の判断の悪さを指摘するものが多い。
 確かに、超スローペースで逃げたイングランディーレのスピード指数は79にすぎなかった。これは通常1000万条件馬の指数であり、とうていG�T馬としてのものではないが、それでもイングランディーレが天皇賞馬であることに変わりはない。
 昔から、穴馬は「短距離の差し馬、長距離の逃げ馬」と相場は決まっているし、その格言が正しいことを証明したようなレースだった。
 ところで、距離適性、長距離馬と短距離馬は何によって区別されるのかというと、遺伝による筋肉の組成比率の違いによるところが大きい。
 速筋はスピードを長く維持できるスタミナのあるFTH線維と、短い間しかつかえないものの絶対的スピードを発揮するFT線維とに分けられる。FTH線維もFT線維も遺伝によってもたらされるものだが、FTH線維は遺伝によって上限が決定され、トレーニングによってしか開花しないという性質を持っている。
 長距離馬はこのスタミナのあるFTH線維が豊富でなければならない。しかし、スタミナのあるFTH線維が豊富であるということは、実はスピード系のFT線維が少ないことも表している。
 道中でFTH線維を使った後、最後の最後にエネルギーを爆発させる筋肉がFT繊維であり、その筋肉のつかえる範囲は、短距離馬でおおよそ800メートル、中距離馬で600メートル、長距離馬では400メートル程度だとされている。
 長距離レースの場合、400メートルしかFT線維を使うことができないため、早い仕掛けは直線で脚をなくすことになる。騎手はそのことを知っているのだろう、逃げ馬が逃げているとわかっても、仕掛けるに仕掛けられない状況に陥ってしまう。いざ仕掛ける段になって、直線叩き出しても、逃げ馬は遙か彼方。追っても届かない。
 逃げ馬の多くは、距離が合わない、距離が長すぎると敬遠される馬が多い。しかし、距離が長すぎるということは、逆に距離適性のある馬たちよりもFT線維の比率は大きいわけで、スローペースに持ち込めれば、距離が長すぎることが直線の叩き合いになったとき有利に働くようになる。
 ふつうG�Tでスローペースになれば、上がり指数は20を越すのが当たり前だが、長距離に限っては、それほどの上がり指数にはならない。今年の天皇賞、イングランディーレの上がり指数は0だったし、2、3着のゼンノロブロイ、シルクフェイマスの上がり指数は5と3でしかない。ヒシミラクルが勝った昨年の天皇賞もペースが違うとはいえ、上位馬たちの上がり指数は5から7。マンハッタンカフェが勝った02年は13から15。01年のテイエムオペラオーの時は8から9程度に収まっている。
 上がり指数に限ってみると、ペースに関わらず、そこそこの数値にしかならないということは、上がり指数が後半600メートルの上がりタイムを元に計算されており、FT線維の発揮できる距離とは少しずれることによる。したがって逃げ馬に大きく離されると、どんなに能力があっても、400メートルしかつかえないFT線維だけで追いつくのは困難だということを表している。
 長距離戦で、逃げ馬をねらうのは、理にかなっている。

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