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2005年4月21日 (木)

第210回スターホース

 「きょうは混んでますよ」
 いつも西船橋から乗り合いのタクシーで中山競馬場に向かう。タクシーの運転手もきょうはお客が多いせいか、元気がいい。
 皐月賞当日、競馬場にはいつもと同じ1時半過ぎについたが、すでに場内は人であふれていた。しかも若い人が多い。うかうかしてたら、馬券も買いそびれてしまいそうだ。
 ランクで決まった福島9レース(3連単8万5590円)を外して、阪神9レース(3連単2660円)、中山9レース(3連単6220円)の安い配当を取った。10レースは中山の3連単1万3510円を当てただけだった。
 人出がさらに増えたようなので、3場のメインレースの馬券はまとめて買った。皐月賞はディープインパクトの1着付け馬券を1000円通しで、押さえで2着付けを200円買った。ターフビジョンの見える位置に陣取ったが、あふれ出てくる人の波に押されて、いつの間にかターフビジョンの映像もよく見えない位置に追いやられてしまった。こんな混雑ぶりは久しぶりだ。私の後は若い人の数人のグループのようで、競馬初心者らしい会話が聞こえてくる。
「ディープはとにかくすげえのよ。このまま3冠いっちゃうからよ」
「3冠って、皐月賞のあとは、ダービー賞なの」
「いや、ダービーには賞はつかない」
「でもダービーって、すごいレースなんだ」
「ディープは一生のなかで、出会えるかどうかの、すげえ馬なんだぜ」
 福島のメイン渡利特別は押さえで100円通しで買った馬券が当たって6万7240円になった。250万馬券の阪神メイン淀屋橋Sは良いところなく外した。
 皐月賞がスタートした。
 人の頭と頭の間、背伸びをして、わずかに見えるターフビジョンの映像をみながら、実況放送を聞き取ろうとするが、耳元で割れるような歓声がとどろいて、全く聞き取れない。「うおっ、すげえ、すげえ」。後ろの若い連中はひたすら「すげえ、すげえ」を連呼しながら、丸めたスポーツ紙をバシバシ叩き続けている。ディープインパクトは直線、外から先行集団をとらえると、一気呵成にトップに躍り出る。
目の前のわずかな隙間、駆け抜けていくディープインパクトの姿が一瞬だけ見えた。黄色い帽子があとに続く。
 「うおーーうおう」うねるような歓声が波のように押し寄せる。
 そして、ディープインパクトがスターホースになった。
 人の世界もそうだが、スターは人を感動させるだけでなく、動員もできなければならない。この日、中山競馬場を埋め尽くした満員の観客は、まさしく、ディープインパクトの魅力によるものだ。しかも、競馬の知識があまりない若い人たちまでも引きつける魅力に満ちていた。それこそが真のスターなのだ。久しくスターホースといえる馬がいなかった競馬界も、ディープインパクトの出現で、少し明るさが見えるかもしれない。
 私の後ろの連中は相変わらず「すげえよ、すげえよ」と感動に浸りきっている。
 人混みのざわめきの中、私はディープインパクトから買った馬券をポケットから取り出してそっと確認をする。2着はD馬のシックスセンス、3着はアドマイヤジャパン。ちゃんと買っている。シックスセンスが人気薄で、人気のディープインパクトからでも2、3万は着くだろう。人混みをかき分けて、払い戻しに向かう途中、配当が発表になった。足を止めて、手元の出馬表に70780と記入する。
 

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