第739回スローペース
第1レースから、中山競馬場は盛り上がるような人混みだった。いつもより人の声も大きく聞こえる。皆が皆、いつもより足早のように見える。中山競馬場は、大観衆の想いが熱気になって、ぶつかり合い、跳ね返って、ますます熱いるつぼに化す。有馬記念は日本の競馬ファンにとって特別なレースなのだと、あらためて肌で知る。もちろん、私にとっても。
その有馬記念は1番人気に支持された3冠馬オルフェーヴルが勝った。3冠馬がその年の有馬記念を勝つのは84年のシンボリルドルフ以来だ。
アーネストリーが外からスタート良く、そのままハナに立ったが、他の馬は控えたままだ。2番手にヴィクトワールピサ、3番手にトーセンジョーダンとブエナビスタが並んで進む。オルフェーヴルは出遅れて最後方からのレースになったが、3角手前から外に出して果敢に動き、4角では5番手まで上がってきた。そして、直線、一気にスピードを上げ、前で粘り込みを図る馬たちを捕らえて、勝った。
勝ったものの、オルフェーヴルの走破タイムは2分36秒0。8レースの1000万条件の2500メートル戦、グッドラックハンデを勝ったコスモロビンのタイムが2分33秒3だったから、それよりも2秒7も遅いタイムだった。
結果から言えば、オルフェーヴルは早めに動いたのが良かったのだろう。あのままスローペースに動かず、後方に待機したまま、直線に向いてから追い出していたら、果たして勝てただろうか。断然の脚を繰り出したとしても、間に合わなかったかもしれない。3角手前で、「ここで動こう」という池添騎手の判断が、勝利につながったように思える。
月曜日、馬場指数を計算して出されたオルフェーヴルのスピード指数は当然、64という低調なものになった。過去20年ほどまで、スピード指数のデータをさかのぼってみても、グラスワンダーの73が有馬記念勝ち馬の最低指数で、オルフェーヴルの指数は、歴代の有馬記念勝ち馬の指数として最低のレベルになってしまった。もちろん、スローペースに見合う鋭い上がりの脚を示しており、指数そのものの高さ、低さだけで能力を問うつもりはない。
それにしても、だ。
もともと多少のスローぺースは騎手たちも覚悟していた風だが、しかし、わかっていたのなら動いてほしい。騎手のチャレンジ精神を示してほしい。あの超スローペースは、レースで持てる能力を出し切るという視点からは、価値が薄いレースになってしまった。
ここが引退レースになったブエナビスタは馬群に沈み、トーセンジョーダンも粘りきれなかった。2、3着には比較的人気薄だったエイシンフラッシュとトゥザグローリーが上がってきて、3連単7万8260円の好配当、馬券は少し波乱含みになった。
私は、オルフェーヴルから、ほぼ総流しの3連単を買っていて、ラッキーだった。一緒に行った他の2人ともに、3連単、3連複を当てていて、会話も弾んだ。
2011年、すべてのレースが終わったあと、すでに薄暗くなったターフに浮かび上がるブエナビスタ。その引退式をみながら、「ありがとう」とつぶやいてみる。
この1年間、大震災があり、原発事故があり、政治の体たらくがあり、幸せばかりの人生、楽しいばかりの競馬ではなかったが、それでもこうして生きている。その私の人生の時の中に、輝かしいブエナビスタもいたし、オルフェーヴルもいた。ただただ、感謝である。
スピード指数も来年は20年目。愛していただいているみなさんとともに前に進みたいと願っています。1年間、ありがとうございました。
馬場日記、新年は6日に更新の予定です。
(お知らせ)
12月1日から、新基準タイムの受付、販売を開始しました。
新基準タイム2012年版(改訂26版)は、2012年1月5日以降の馬場指数、スピード指数の計算に使用するもので、昨年同様、ご入金確認後、お待たせすることなく新基準タイムをお送りいたします。来年は、いよいよスタンド、馬場改造が終わった中京競馬も始まります。中京競馬場の基準タイムは、その開催に合わせて、順次、更新していく予定です。
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